そよかぜ一家

ブラウザゲーム「英雄クロニクル」のプレイ日記、SS、落書き置き場です(・ω・)

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AUC8期 ソニィ一家の日常 二話

 「秋風が運びしその香り」 

-刻碑歴997年9月上旬 イズレーン国境に近い街道にて


黄昏の聖域での覚醒の数日後、ソニィ達3人はイズレーン皇国の国境に程近い街道をひたすら東へ向かって歩いていた。
時刻は昼食時を少し過ぎたあたり。
空は青々と晴れ渡り、とんびが気持ちよさそうに鳴きながら円を描いて翔んでいる。


「はあー…、お腹減ったぁ……。」

とぼとぼと歩いていたソニィの腹が「ぐぅ~」と盛大に鳴り響き、すれ違った旅人が何事かと怪訝な顔を向けた。

手持ちの食料は尽き、飲水も残り少ない。
わずかばかり残っていた簡素な携帯食も先程分けあって食べ尽くしてしまったが、とても3人分の腹を満たせる量ではなかった。


「……食料を調達できるような街にはもう暫くかかりそうですね。」

広げた地図を確認しながらレアスが言った。


「あー、もうっ。
 ケチんないであの馬車に乗っとくべきだったかしら……、はぁ。」

そう言ってその場にへたり込む。


ソニィの言う馬車とは乗り合い馬車のことである。

先日、黄昏の聖域から程近いオーラム共和王国の王都アティルトに立ち寄り、食料などを調達したのだが、
その際、イズレーン皇国方面へ向かう、ある乗り合い馬車の存在を知ったのだ。
その馬車はヴァルトリエ帝国の魔導科学の技術により造られた機械仕掛けのもので、通常の馬車に比べて日程を大幅に短縮できる反面、
運賃は少々、いや、かなりの高額だった。

とはいえ、出せない額ではなかったのだ。
何故なら、時の巻き戻り以前の前の巡りに蓄えた財産の一部を、とある方法にて持ち越してきたから、である。
だが所属国に到着し、傭兵となった後しばらくは、それはもう色々と出費がかさむのである。例えば雇用費とか、あるいは雇用費とか。

なので出来るだけ無駄使いは避けようという話で3人一致したのだが、ならば通常の馬車を、というハムの意見までもをソニィはすっぱりと却

下した。
歩いて行けない距離じゃあないし、物見遊山のついでに鍛錬も出来るし丁度いいでしょう、と。

そういうわけでこうして歩いているのだが、買い込む食料を少なく見積もりすぎたのか、それとも消費量の見込みを誤ったのか、
3人の胃袋はちょっとした危機を迎えていたのだった。



一行が足を止めて地図を覗きこんでいると、そよそよと吹いていた風の向きが唐突に変わった。
その風に、ソニィは人間より少しばかり利く鼻をくんくんとひくつかせる。

「なーんか……、美味しそうな出汁の匂いがする……ような?」

先程より更に大きめの腹の音がぐうぐうと鳴り響き、背中の荷にとまっていた尾白鷲の蒼黒がさもそれが合図だったかのようにバサバサと翔

び上がっていった。

「ありゃ、獲物でも見つけたのかしら。」


「おまえの……腹の音に、驚いたんじゃあ、ないのか?」

それを目で追いながらハムがため息混じりに呟いた。


「むうー、仕方ないじゃない。勝手に鳴っちゃうんだものっ」

ソニィが少しむくれながらそう口にした時、上空からピィー!と鋭い鳴き声がした。
見れば蒼黒が頭上でとんびのようにクルクルと円を描いて舞っている。

「何か、見つけたのかもしれませんね。」

レアスも顔を上げてその姿を見つめる。
そうして3人で暫く眺めていると、やがて大きな翼を数度ばさりと羽ばたかせた後、街道の先の方へ向かって翔んで行ってしまった。

「ん~……、そうね。
 うん、そうに違いないわっ」

特に確信は無かったが、ソニィは小さくなっていく愛鷲の姿を見ながら、すっくと立ち上がった。


「……よーっし!行くわよ二人共っ!!」

そして先ほどまでとは打って変わって一際威勢のよい声を上げると、大股でズンズンと歩きはじめる。
そんな姿にハムとレアスは顔を見合わせて苦笑した後、送れまいと歩を早め後に続いていった。




それから歩くこと十と数分後、ソニィ達は街道に面して建てられた一軒の小さな茶屋らしき建物の前に来ていた。。
店の入口に下がった暖簾には「旅の茶屋 道通流」と書かれている。

暖簾をくぐり店内を覗きこむと、昼時を過ぎているにもかかわらず、さほど多くない席は客で埋まっていた。
店のあちこちから賑やかな喧騒に混じって、出汁やお茶の良い香りが漂ってくる。

『お、いらっしゃい姐さん。 ……3人かい?』

空席は無いものかと見回していると、小柄で耳のとんがった店員とおぼしき男が声をかけてきた。

「え、ええ。 席、一杯なのかしら?」

ソニィがそう答えると男は、ニカッと人懐こい笑みを浮かべた。

『大丈夫でさあ。中はいっぱいだぁけど、外の席ならまぁだ空いてるよぉ。』

そして『こっちだよぉ』、と言いながら店の脇の方へテクテクと歩いて行く。
ソニィたちもそれに続いた。

店員について行った店の裏手には、長く伸びた軒先の下に幾つもの長椅子が並んでおり、たしかにまだ十分に席が空いていた。


3人は促されて長椅子に腰を降ろし、各々が置かれていた品書きに目を通しはじめる。

『いーい 秋晴れだねえ。』

お伽話に出てくる草原の民のような風体のその店員は、ソニィ達の脇に立ち懐から伝票と筆を取り出すと、のほほんとそう呟いた。


「そうねー。
……と、私はにしん蕎麦とみたらし団子と麦茶!」


「私は……、キノコおろし蕎麦と緑茶をお願いします。」


「……きつねうどん……と、ずんだ餅。 それと、どくだみ茶……、アイスで。」


小柄な店員はサラサラと慣れた手つきで伝票に筆を走らせ、注文を確認したのち、
『では少々お待ちくださいねぇ~』と、またニッカリ笑って去っていった。
入れ替わりるようにずんぐりした体型のひげもじゃの店員がやってきて、3人の前に水の入ったグラスを置いていく。

その水をチビチビと飲みながら腹の虫を抑えていたソニィが、何かを思い出したようにふっと頭を上げた。

「あ。」


「どうかなさいましたか? 母さま。」

同じく水を口にしていたレアスが顔を上げる。


「ああ、うん。
待ってる間 暇だし、コレのこと話そうと思って。」

そう言って左耳の金色の小さなイヤリングを指で摘んだ。

「聞きたい?」


「……お願いします。」

一拍置いてレアスがこくりと頷き、ハムは無言でソニィの顔を一瞥した。


そんな二人の顔を交互に見た後、そっと耳飾りを外し手のひらに乗せてからソニィが語りだした。

「これは ねえ。
あいつが……、父が、私にくれた唯一のもの、なの。」


「唯一の……ですか?」

「そ。」


……以前、ソニィが話してくれた彼女の両親の話をレアスは思い返した。
レアスにとっては祖父母にあたるが、話すことはおろか、顔も知らぬ二人の話。

ソニィによると、彼らはある大きな不義を犯した。
それは実の兄妹で婚姻を結ぶ、ということ。

最もそれは両者の思慕などの思いからではなく、ソニィの父であり、また母の実の兄である男の、とある馬鹿げた目論見によって強引になされ

たものであった。
だがその目論見は大いに外れてしまった。ソニィという結果を伴って。

故にその男は、妻とした妹と、実の娘であるソニィを見限り、屋敷の一角へ押し込めた。
そしてそれ以降は、夫としても父としても振る舞うことはなかった……と。

普段見せることのない暗い表情でそれを語ったソニィの姿を思い出し、レアスはそろりと母の顔を覗き込んだ。
が、予想に反してその顔は不思議と穏やかだった。


いつの間にかハムもその顔をまじまじと見つめていた。

「……父親らしいこと、は……何も、してくれなかった、んじゃない……のか?」


「ええ、それはちっとも。」

ソニィが大げさにゆっくりと頭を振る。

「この耳飾りはね、母さんが病気で亡くなって……ひと月くらい後だったかしら。
 家人を通じて私に渡ってきたの。

 最初はね、どういうつもりなのか、さっぱりわからなかったわ。 
 でも……、暫くして気が付いたのよ。

 ほら……、ここんとこ。」

そこまで言うと、耳飾りの乗った手のひらをつう、と前に伸ばした。
二人がそれを覗きこむ。
するとリングの内側に、なにやら小さく文字のようなものが刻まれているのが微かに見えた。


「何か…、彫ってあるようだが……。」

「……小さくて読めませんね。」



「―――『マリーシャへ』」

ソニィがポツリと呟く。


「それは……、母さまのお母様の名前でしたね。

 では、それは母さまに送られたのではなく?」


「そっ。
 
 父が……、母さんに送りたかったけれど、送れなかったもの、ってことみたいね。」

ソニィは苦笑交じりの淡い微笑を浮かべた。

「だからって私に押し付けられても……ねえ。」



「二人……、お前の両親、は…、『ケイショウシャ』……を、生むためだけに、一緒になったのでは……ない、
 と……いうこと、か?」

手のひらの耳飾りを覗きこんでいた顔を上げ、ハムが尋ねた。



「……わかんない。

 でも、あんな仕打ちを受けながら、母さんはアイツに対して恨み事一つ言ったこと、なかったし……。
 アイツも、父も本当は……、ま、これは私の勝手な願望かもだけれど、
 母さんに……少しなりとも、そう、妹として以上に特別な思いを抱いていたのかもしれない……わね。」

言いながら、ソニィは耳飾りを元の位置に嵌め直す。

「でも、私はずっと……父のことを恨んでいたわ。
 ……母さんの見舞いにすら、一度も来てくれなかったのだもの。」
 

「今は……違うのですか?」

レアスは穏やかな顔でそう話すソニィに、遠慮がちに尋ねた。


「んー、許すつもりは毛頭ないんだけどさ。
 この……、母さんの名前を見つけた時ね。なんだろ、少しだけ胸のつかえが取れたっていうか、なんつーか。

 ああ、あいつも……色々あるんだなあって思っちゃったら、なーんか気が抜けちゃったのよねえ……。」

耳に嵌めたそれに触れながら、ソニィは、すぅっと目を閉じた。


その顔を見つめていたハムの頬が僅かに緩む。


レアスはそんな二人の様子を見比べながら、たった今聞いたソニィの言葉を頭の中で反芻した。
母の……、父親に対する思いの変化については理解出来なかったが、その勝手な願望とやらは真実であって欲しい。
そう、思った。


ソニィの父が求めたという『ケイショウシャ』と呼ばれる存在。
レアスはそのうちの一人である。

かの一族が神と崇めし、星の御霊たる主より分かたれし、いくつかの力の断片。
そのうちの風の力をヒトの身に宿し、幾度も幾度も輪廻を繰り返し、それら全ての記憶を積み重ねてきた者。
それがレアスの本質。

だが、だからと言って『ケイショウシャ』は神ではない。
所詮、借り物の力を限られた器で持て余すだけの、神にもヒトにもなれぬ半端な存在。レアスはそう思っている。

だからそれを迎えたところで、人間から覇権を取り返すだの、一族を再興するなどといったことが果たせるはずがない。
それは彼……、ソニィの父もわかっていたはずだと思う。

それならば何故、禁忌を犯してまでそれに固執したのだろうか……。

………。

もしくは、それらは建前に過ぎず、本来の目的は何か別の……?


レアスが手にしたグラスの水が僅かに揺れるのをボンヤリと見つめながら、そんなことを考えていると、
先ほどの小柄な店員が両手に盆を持ってやってきた。

『お待たせいたしました~。
 みたらし団子にずんだ餅に、麦茶と緑茶、どくだみ茶になりますぅ。』

そういって矢張りニッカリと笑みを浮かべる。

『お蕎麦とうどんの方もすーぐにまいりますからねぇ。』

彼は団子と茶をさっさか並べた後、ぺこりとお辞儀をし、
そして『ごゆっくりどぉぞー』と言いながら、短い足をちょこまかと動かしてまた去っていった。


目の前に並べられた団子たちを見たソニィの腹の虫が再びグゥ、と鳴った。

「ま、そういうわけで……
 これくらいは貰っといてもいいかなーって思ったのよ。

 この辺で……いい?」

耳飾りから手を離し、己の団子の前でわきわきさせている。



「はい、ありがとうございました。母さま」

レアスはそんなソニィの様子に顔を少し綻ばせつつも軽く頭を下げ、己の注文した緑茶の入った湯のみに手を伸ばし、そして止めた。



「あ、あの……。」


「むぐむぐ…… ん、何?」

その間にもソニィの皿からは見る見るうちに団子が減っていく。



「あの、ですね。

 父様と母さまの…… その、馴れ初めなどを、お聞きしたいのです、が……。」


「――ぶっ!?」

それを聞いたハムが口に含んだのどくだみ茶を噴き出しそうになり、ゲホゲホと咳き込んだ。


「ちょっと、何やってんのよ もう……。」

その背中を軽く擦りながらソニィが呆れた顔をする。

「いや、まあ私もびっくりしたけど……。

 にしても、レアスもそんなこと気にするようになったのねえ。」

ソニィはかつてのレアスを思い返しながら、嬉しそうにお茶をすすった。



『ケイショウシャ』として産まれた者は、物心がつく頃から徐々にかつての記憶と力を取り戻していくのだという。
レアスもそうだった。
かつてはよく笑い、よく泣く、普通の少女であったが、5つの誕生日を迎えた頃からだろうか、
急激にその表情は失われていき、ソニィ達にも余所余所しい態度を取るようになった。
唯一残ったのは、二人を呼ぶ際の「父様」と「母さま」という言葉のみ。

ただの子供であった時の記憶と、幼い心には重すぎる過去の己の記憶逹。
その2つの狭間でレアスは一人、悩み、苦しんだのだろう。

ソニィとハムはそんな彼女の今も昔も、その力も、全てを受け入れようと決めた。
そして根気よく、今までと変わらずに接し続けた。
それでもあなたは私達の娘。そう、言い続けた。

その甲斐あってか、ゆっくりとではあるが少しずつ、レアスは表情を取り戻していったのだ。

 

「そう・・・でしょうか。」

レアスは小首をかしげた後、続ける。

「あ、勿論今のは今でなくても・・・、言葉がおかしいですね。
 ・・・そのうち、お願い出来ますか?」


「ええ、いいわよ。
 ご期待にそえるかはわからないけど、ね。てか、そういや前に約束してたわね・・・ゴメン。」

済まなそうな顔で言うソニィに、レアスはゆっくりと首を振る。

「いえ、何事も準備というものがあるでしょうし、私はいつでも……
 その時を楽しみに……お待ちしております。母さま」

穏やかな表情のレアスに「ん。」と笑い返した後、ソニィはもっきゅもっきゅとみたらし団子を頬張った。

「うん、……もぐもぐ……ごくん。
 ……レアスも一本、どう?」



その後、ソニィはハムに分けてもらったずんだ餅を大層気に入ってしまい、持ち帰り用に追加注文などしたりしたとかなんとか。
・・・節約とは何だったのか。

まあ、それでも路銀はなんとか足りて、3人は無事イズルミへと到着した。
そしていつもの傭兵家業がまた始まるのだった。

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  1. 2015/04/05(日) 17:17:05|
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